「俺と、ごはん、行こうよ」
それはあまりに不器用であまりに突然の出来事だった。
「友達の彼氏の友達」なんてありがちな知り合いから食事に誘われ、「付き合って」の一言に簡単に頷いてしまったのだ。
勿論後悔などしてはいなかった。薄暗い街灯の下でもわかってしまうほど顔を真っ赤にしたハルキを愛しいと思った。そばにいたいと思った。
そんな、冬の、月のしたの、できごと。
ハルキはとても静かな人だった。声を荒らげたことなど一度もない。彼は大学生で私は社会人、出会ったのも高校を出てからということもあり、本当のところ彼の人となりをよくわかってはいなかった。しかし、羨ましいほどに肌が白く、背が高い、整った顔立ちの彼のルックスに惹かれてしまったというのは疑うまでもない事実である。もちろんそれだけではないのだが何を差し置いてでもそこがポイントだったのだ。
だから、彼に見とれてしまうこともしばしばあった。
「ユカ?」
と、その絶景を遮るのもハルキの手のひらだった。ハッとして「なんでもないよ」と返すのがギリギリ。「そ」と素っ気ない返事を返すのは、決して機嫌が悪いわけではなく、それは日常なのである。
私はというと決して派手ではない、どちらかというと地味な人間だ。小中学生時代の友人は「あぁ、あの子?知ってるわ。でもそこまでの仲じゃないわね。」がお決まりのリアクション。なぜそんな私をハルキは選んでくれたのか。それは全く持って謎である。
「ハルキは私のどこが好きなの?」なんて甘ったるくて、こっぱずかしくて、それでいて可愛い質問もできないまま、季節は夏を迎えた。
未だに掴めない彼と夏祭りに行くことになり、浮き足立った梅雨明け。