「ねぇねぇ、この服どうかな~?似合ってる?」


「はい!!すごくお似合いです!!」


試着室の扉が開き、お客さんにそう答える。


鏡に自分の姿を映して、色々なポーズを決めるお客さん。


この男性はよくお店に来る常連客だ。


20代前半で肌を黒く染めた派手なお客さん。


サーフィンが趣味で大会に出ると毎回優勝して、家がトロフィーだらけだとよく自慢していた。


服を買ってくれるのは嬉しいし、お店的にも大切なお客様だ。


だけど、このお客さんはあの手この手を使って必死で口説こうとしてくる少しめんどくさい人だった。


「ねぇ、姫子ちゃん。今日バイト何時まで?今日こそ飯食いにいこうよ」


「すみません。今日は予定があるんですよ~」


「えーー、また?じゃあ、明日は?」


「今週は全部予定がいっぱいなんです~」


「じゃあ、来週ね。マジ、約束だから!」


うわぁ。今日はいつにもまして手ごわいぞ。


にこやかにそう言い放つお客さんに苦笑いを浮かべる。