「私に言えるのはそれだけだ」

ダは、それだけを口にした。

「その者の詳細を少しは絞れたな......。ご苦労」

そう言ってヴィーナスは、真っ直ぐな目でダを見つめた。

黙ってダは、微かに頭を下げた。

「密会を終了したいところだが、一つ、そなたらに聞きたい。......セレネを見なかったか?」

「いや、見てませんけど。......エンデュ、お前ならっ」

カゲンは、そう言うとエンデュの方を見た。

「......知りません」

無感情な表情で、彼はそう言った。


セレネ......誰であったろうか?

何故かいつも、彼女の純粋に笑う表情が頭に浮かぶ。

だが、俺は思い出せない。

それに、考えるほどに、何故が胸がしめつけられる事があった。


「そうか」

ヴィーナスは、この時、心配げな表情を浮かべていた。

「何か、あったの?」

ジュノは、そのヴィーナスの様子を見て、言い出した。

「実はな......。昨日の午後から、娘が帰らない。............何処へ行ってしまったのか」

三人は、ヴィーナスが娘を心配する姿を初めて見た気がした。

絶対に、ヴィーナスはこの国を治める女王として、そのような部分を神々に見せるような事はけして無かった。

それだけ、心配するような事がここ最近に、あったのかも知れない。


三人は、ヴィーナス女王の様子に心配をしつつ、城を出て行った。