前のように俊夫を先頭にして一列に並んで、僕等は真っ暗な廊下を静かに進んでいる。
誰もいない。光さえ漏れてこない。なのに、人の気配はする──じっとこちらを伺っているような。
絵美たちは無事逃げただろうか。
傷んだ廊下がギシギシ軋む。その音は、とても大きく聞こえ不安になった。見つからないだろうか。
そこまで考え、僕は思った。見つかる?誰に。
「…………」
自分に苦笑しかけたところに、俊夫が鋭く息を吸いこんだ音が重なった。 誰ともなしに、足を止める。一番後ろを歩いていた公平が、恐る恐る僕に聞いた。
「…なっ。何が起こったんだ?」
しかし、答えたのは僕ではなく、僕の前にいる響子だった。
「職員室を見たの。誰もいなかったけどね」
そこで一度切り、続ける。
「おかしいと思わない?先生がこんなに早く帰るはずもないし、出ていった様子もない…」
「つまり、先生が消えたって事か!?」
思わず声をあげた俊夫を響子が目で黙らせる。
「とりあえず、出口に急ごう。今二階だから、あと一つ階段を下りれば…」
「その前に、こっちの校舎からあっちの校舎に移らないと。西校舎には、昇降口はないはず」