響子が若干不機嫌さの残る声で告げる。
「こっちから、開く扉はあっちの突き当たりにあるあの扉だけよ」
「そこからなら出られるのか!?見てこようぜ」
公平がやっと希望を見いだしたように、表情を明るくする。
「理生、公平と一緒に行って。1人で行動は危険よ」僕は素直に頷いた。今は響子に従った方がいい。少なくとも、彼女が一番冷静だ。

今の響子にはもう、常に纏(マト)っていた『どうでもいい』という雰囲気はない。それを通り越し『速く終われ。帰りたいんだよ』という雰囲気になっている。

僕は、公平と共に突き当たりの扉まで行った。公平が鍵に手をかけた。しかし、開かない。暗いのと、開ける場所を間違えているのと、兎に角色々な事が混ざり合っている。
見かねた僕が、鍵にかかったストッパーを押し上げ、鍵を開けた。扉に手をかける。大丈夫、開く。
しかし、僕が扉を開ける前に黒い影がいきなり外に現れ扉を勢いよく開けた。

─そしてそのまま、中へ飛び込んできた…。