響子が鋭く言い、僕の服を掴んで引いた。
「バラバラになるのが一番危険よ」
俊夫はもう突き当たりの角を曲がってしまっている。公平も…今、見えなくなった。
「次の階段で2人は降りるわ。そしたら昇降口だけど…」
「昇降口は開いているのか?」
走り出しながら聞くと、響子はあっさり首を振った。
「開いているはずがないわ。先生達は、6時30分の時点で、完全に戸締まりをしてしまうから」
「なら、俊夫達は…?」
響子は、暫(シバラ)く黙った。そして、自信なさげに言う。
「内側から開くのは、一番奥の扉だけだけど…。今の俊夫達が、それに気付くとは思えない」
「どっちにしろ、急いで追いかけないと駄目ってことか」
僕は足を早めた。けれど、死に物狂いで走ってる2人には追いつけない。
ようやく僕等が息をきらせて階段を降りると、俊夫と公平は必死の形相で昇降口の扉を、ガチャガチャやっていた。
堅く閉ざされた扉を、俊夫は、押したり引いたり必死に開けようとしている。そんなことをしても開くはずがないのに…。鍵がかかっている。という事実は、彼の頭から吹っ飛んでるようだ。