病室に入ると、オトンは呼吸器をつけていた。
「美穂、ごめん。オトンなぁ…」
「なんで言ってくれへんの!?なんで…うちに隠したんよ………」
ウチのあふれ出てくる涙を指ですくって、
オトンは申し訳なさそうに言ってん。
「美穂に、“病気のオトン”として見られたくなかったんや。最期くらい、かっこええ存在でいたいやろ。」
アホ。
どアホ。
「アホ。」
いつもかっこええ存在やで、そう言いたかってんけど、
言われへんかった。
「泣くのやめぇ。俺も泣けてくるやろ…」
オトンが初めて、うちの前で泣きました。
今まで、うちの前で泣くことの無かったオトン。
オカンが死んだ日も、うちが寝たあとに1人で泣くようなオトンが。
そんなオトンがうちの前で泣いてん。
そんな姿を見たときに思った。
うちは支えなアカンな、って。
思い出残したらなアカンな、って。
簡単なことやないけど、
それがうちに出来る親孝行なんやと思う。
うち、オトンのために頑張る。