友人に無理やり渡されたリュックの中身は転けたせいで、あちこちに散らばっている。
ハンカチ、ティッシュ、水筒……まるで小学生の遠足の荷物だわ。
それらを拾い、辿ると川とは程遠い小さな水の流れ。
そしてその先にはこぢんまりとした家があった。
いち、にの、さんっ。
少し勢いをつけて、流れをジャンプで飛び越えた。
そしてそのまま駆け寄って、ログハウスのようなその建物の周りを一周してみる。
初めて見た本物の煙突からはもくもくと煙が出ている。
……ということは、中に誰かいるってことよね。
友人が言っていた''ステキな場所''とは、おそらく……。
いや、確実にここのことでしょう。
こんな辺境な森、他になにかあるとは思えない。
もう見つけたんだから、帰ったっていいのだけど……。
足がどうやら限界みたい。
ごくりと唾を飲みこみ、私はそっと扉に手を伸ばした。