さくさく、と靴底と葉と葉の擦れる音がする。
地面から顔を出した木の根に足がかからないように気をつけながら歩く。
足は疲れから重い痛みを伴っていて、正直もう1歩だって歩きたくない。
「騙されたわ……」
''この森にはね、ステキな場所があるんだ。
ずっとずーっと奥の方。
優しい思い出イッパイあるよ''
そう言った友人に送り出され(押しこまれ)、足を進めてはいる。
が、しかし。
そんなもの見つからないじゃない。
ステキな場所ってなんなのか。
それだけじゃなくて、本当にあるかもわからないし。
「ぅわっ、」
べたん。
咄嗟に手をつく余裕さえなく、気がつけば倒れこんでいた体。
頬も膝も腕も、みんな痛い。
なんでこんなことを頑張らなきゃいけないの?
むくりと起き上がりながら、浮かぶ疑問はここ数年、なにをしていても思うこと。
誰より好きで、大切だった────彼を失ってから、私の中にはそればかり。