「で、どこ行くつもりだ?」
「…」
「おいっ!!」
「…」
もういい。
もしかしたら
風のせいで聞こえてないのかもしれないし…。
にしても、こいつ、
バイクを運転できるなんて本当に何者なんだ?
よく考えたら
こいつのことはなにも知らない。
そんなことを考えていたら
バイクが止まった。
信号のようだ。
そこで
思い出した。
「おい、これ」
チャラ男に見えるように顔の前に
スマホを置く。
スマホの画面には
中学生の頃の俺が映っている。
「…この時の俺と
かけ離れた俺に…なりたいんだ…。」
すぐに
スマホは収める。
俺の前にいるチャラ男は
ニヤリと口を動かした気がした。
「…本当にいいんだなっ。」
小さかったのか
それとも風のせいで聞こえなかったのか、
とりあえず、
いきなり出発しないでほしい。