「Guten Tag」

耳障りな嫌な声。
私が振り向くと、含みを持たせたいやらしい顔があった。
歳は50くらいだろうか。

国会議員のフリーデル.エーベルトだ。

こんにちは、エーベルトさん。

私が拙い英語で返すと
彼は目尻をさらに下げ、
私の胸元を、見た。

赤いパーティドレスの首元には夫からのプレゼントのダイヤのネックレスが、光っていた。
でも、彼はネックレスではなく、
私の胸元を見ている。

サエ、今日も綺麗だね。

エーベルトはドイツ語で返してくる。

Danke

私が一言で返すと、丁度そこに夫が来た。

やあ、棚部さん。相変わらず若くて美しい奥さんだね。

エーベルトは手のひらを返すように
英語で夫に話しかける。

エーベルト、君も日本で働いたらどうだい?たまにこれくらいの女がいる。

私は、こういう話に嫌気が指す。
エーベルトの妻のような、100キロは超えてるだろうほどの巨体がいいとは思わないが、そうなるのも悪くないかもと思うほど
容姿の話は嫌気がさす。

そして、エーベルトはほんとうにいやらしい目で私を見ている。