「えー、では最近、図書室の本が盗まれる事件が相次いでいる件について、


早速、会議を始めたいと思います」




正直、会議の内容など、頭に入らなかった。


適当に、聞き流しているだけ。


耳に入ってくる言葉は、すぐ通り抜けてしまう。




私の頭の中には、あの"噂のアヤメちゃん"という言葉でいっぱいだった。




ただの噂のはずなのに…。


何故か、私にはただの噂には思えなくてー………。




どうしてだろう。




いつも、私は噂なんか信じなくて、


自分の目で、自分の耳で、


直接見たもの、聞いたものだけを信じるタイプなのに。




今日、萌が言っていた睦月君が彼女と別れたっていう噂だって、


ふーん、そうなの?


本当だったら、かなめはラッキーだろうね。


位にしか思えなかったし…。




なのに、何故"噂のアヤメちゃん"なんか信じちゃうんだろう…。




睦月君が彼女と別れたっていう方が、よっぽど現実的だし、


普通なら、皆、そっちの方を信じるだろうに。