「アヤメちゃんは、誰からも愛されなかった可哀想な女の子。


アヤメちゃんは、絶望して自殺した女の子。


アヤメちゃんは、嫉妬の塊。


アヤメちゃんは、幸せな人を妬む。


故に、アヤメちゃんは、幸せな人の前にしか現れない。


そして、アヤメちゃんはその人に契約を求める。


契約しなければ、その人は死に、


契約すれば、その人は毎日一人ずつ愛する人を殺さなければいけないの。


愛する人全員を殺し終えると、その人達はいなかった事となるの。


そして、その人の記憶からも、消える。




ねえ、もし皆の前にアヤメちゃんが現れたら、


どうする?」


「…」




皆、黙っていた。


だって、いつもおバカな葵が、真面目な顔して、こんな話をするから…。


しかも、怖そうな噂だし…。




葵が、いつもの葵じゃないみたいだ。




だけど、コロッと葵は打って変わって、いつものにまにま笑顔になった。




「なぁ~んて、あるわけないよね~!」


「はは…そうだね」


「うんうん、それこそ、ただの噂だしね…」


「そうだよ、そんな事ありえないっしょ」