ドアの向こう側からかすれた声が聞こえた。

「お兄ちゃん?」

急いでドアを開けると、顔が血まみれのお兄ちゃんが、フラフラで立っていた。

よく見ると、知らない人に支えてもらっている。

「きゃー!お兄ちゃん!!」

「とりあえず、トイレ!どこ?」

その人は、玄関を見渡した。

「そ、そこ!」

連れ添いの人が、お兄ちゃんをトイレへ連れ込み、背中をさすってもらいながらお兄ちゃんは便器に向かって嘔吐した。

よく見ると、その中には血も混じっている。

「え……なに?どうして?」

「一緒に飲んでたら、帰りにヤクザみてーなのにからまれて」

よく見たら、その人もお兄ちゃんほどではないけど、顔に傷がある。

「きゅ、救急車よびますか?」

「どうだ?夏生………呼ぶか?」

お兄ちゃんは無言で首を横に振り、その場に倒れこんだ。

お兄ちゃんをベッドに運んで、顔の手当てをしたら、何か落ち着いてきた。

「………夏生とは、中学のときの連れ同士なんだ」