「あ……いや、いつもと違って私服だから……なんか、緊張してるのかも」

「何で(笑)」

雨くんはくすっと笑った。

「雨君は、服はどこで買ってるの?」

「地元の古着屋とか」

「へー……あの辺、古着屋あるんだ?」

少しずつ、緊張が溶けてきた。

「うん。俺の団地の奥のほうだから、あんま目立たないけど」

「そうなんだ………」

話してるうちに、開始のブザーが鳴った。




映画は、正直、あまり集中して観れなかった。

雨君が隣にいると思うだけで、緊張して…………


これ終わったら、どうしようかな~

帰るのにはまだ早いし、帰したくないし。

もう少し一緒にいられる場所………

映画が終わり、劇場に明かりがついた。

「あ………とりあえず出ようか」

「ん」

私と雨君は席をたち、劇場を出た。

「これからさ……」

「あ、和久」

どうする?とゆう言葉は、知らない人の声に遮られた。

私たちがトイレの前を横切ると、ちょうどトイレから出てきた男子が、雨くんに声をかけた。

「おう、偶然」

雨君は少し驚いたように私に背を向けて答えた。