けれど私の耳の奥には濃い靄がかかっているようで、何を話しているのかもよくわからず、テキトーに作り笑顔でごまかした。


「……………」

すると、雨の手が、私の頬に触れた。

思わず顔を上げると、目の前の雨はなんだか顔色が悪かった。

それと同時に、私は一度も雨の顔を直視していなかったことに気がついた。



「…………つらい?」

「…え?」

「俺といるの、つらい?」

「………っ」



やばい、泣きそう…………


ポタ…

ふと、私の頬に、雨の雫がついた。

「……降ってきたな」

空を見上げると、雨がぽつぽつ降り始めていた。

よかった。

これで、涙が隠れて………。

こんな所で泣いても、雨が困るだけだ。

「こっちへ」

雨に急に手をひかれた。

ころびそうになりながらも、私は何も言わずに一生懸命に追いかけた。

「…………」

私たちが入ったのは、トンネルのなかだった。

外は本格的な土砂降りだ。


雨はぽつりと呟いた。

「……無理、しなくていい」

「………え?」