映画館に入り、一番後ろの席に座った。

そんな有名な映画でもない。

しかも途中から入ったから、誰が主人公なのかもよくわからなかった。

「………………」


画面に、真夜中の墓地が写った。

なんだか、女性のあえぎ声が聞こえる。

墓地の裏側で、命知らずの若者二人が、体をつなげていた。

ホラー映画だから、たぶんこの二人は襲われるんだろう………。

『ハア……ハッ………何か、墓地って興奮するな……』

『もう……バカ………んっ』

彼女役が墓にもたれかかって、彼氏役は彼女の背後に密着し、腰を振っていた。

『ねえ……何か、ヘンな音しない?』

『……幽霊でも、いるんじゃね?』

彼氏は軽はずみに言うが、彼女は真剣な顔だった。


ふと、私の脳内に…おかしな考えが浮かんだ。


雨も……彼女と、こんなこと、したのか………。

「…………!」

すぐにハッとした。

私……なんてこと考えて………。


若いカップルの悲鳴が墓地に響くとき、私はもう劇場を後にしていた。