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愁也が居ない夜を二日越えて。
ホテルの部屋でゴロゴロと、私はまだまだ落ち込んでいた。

どうしよう。
このまま帰ってこないなんてことになったら。

「イヤだあぁあ~」

次第に得体のしれない焦りと不安でいっぱいになる。


「イタリア来たら、蜂の巣言いまシタ、アズサ!!」

ばあんっと音を立てて、扉が開かれ、不法侵入してきた金色のお猫様は、私を睨みつけて高々と言い放った。

うわあ……。

思わず緩んでしまった頬に、お猫様が眉を吊り上げる。
でも、でも。

「どーしよ、今あんたでも会えて凄く嬉しいよ。マリア」

相当参っているらしいな、私は。
マリアは私のジメジメした様子に毒気を抜かれたのか、睨むのはやめて呆れ顔に変わった。

「レオナルドの思うツボね。シューヤがウワキするわけないデス」

このワタシを振ったくらいなんだから、と続ける。

「マリアより美女だったよ」

「馬鹿アズサ!!!」

はい、すみません……。

「シューヤに聞くといいデス。絶対アズサの勘違いネ」

婚約者の私が疑って、他人のマリアが絶大に信頼してるとは。
思わずベッドに突っ伏して唸ってしまう。

「情けない……。私なんてこのまま溶けたらいいんだああー」

「ホテルにメイワクね」

マリアの冷たいツッコミ。

「逢いにいく、イイね。シューヤ幸せにしないの、ユルサナイから!」


ううう。


「マリア~~!!」


涙目で抱きつこうとして。

……気まぐれお猫様に引っかかれた。
……そんで廊下に叩き出された。


「サッサと行くネ!!」

い、痛いよぉ。


「そう言えば、レオは?」

ホテルの廊下を二人で歩きながら疑問に思って聞けば。

「……シューヤのお仕置き、“今月の収穫”を消されテ、泣いてマース」

は?何の話?まあいいか。

マリアは溜め息をついて首を振った。

「マッタク、アズサもシューヤも意地っ張りネ。世話がヤケルヨ」

「あんたほんとに17歳……?」