病室から出てきたら、

「嘉雄さんは、うちの娘と付き合っていたのですか？」

と友紀奈の母が開口一番で聞いてきた。

「いいえ。付き合ってはいませんでしたが、今はっきりわかりました。友紀奈さんとつき合わせてください。」

と嘉雄は友紀奈の母へ言った。

しかし、母は顔を歪めて答えた。

「今の状況は見ていただいたとおりです。先生も意識が戻らないことには、先のことはわからないそうです。」

「ええ。今、友紀奈さんにお会いしてわかりました。でも、どうしても自分の気持ちを伝えたいのです。だから、許可してください。」

と嘉雄が答えた。

友紀奈の母は、返事につまった。

もちろん、嬉しい言葉だったが、友紀奈の命の保証はどこにもない。

こんな状況で、お願いしますとは、母も言えなかった。