そうだった。

嘉雄は沙耶が入院してるときに幾度も訪れないでいたのを後悔していたが、なぜ、そんな態度をとったのか今思うと不思議でならなかった。

自分の中に、人としての意識が目覚めたのであろうか?

とにかく、今の嘉雄は、ココにいることしか考えられなかった。

「嘉雄さん、もうそろそろココから出ないとです。」

そう、友紀奈の母に声をかけられるまで、嘉雄は友紀奈の手を握り続けていた。

友紀奈の母も、事情がわかりつつあった。

二人は、集中治療室をあとにした。