「あの・・・友紀奈さんのお母さんですか?」

と嘉雄は集中治療室の前にいた女性に声をかけた。

「あ・・・嘉雄さんですか?」

と友紀奈の母は言った。

「はい。」

とだけ嘉雄は言った。

友紀奈の母は、余分な話はせずに嘉雄を友紀奈のいる場所へと一緒に案内した。

もちろん、面会時間は少ししかない。

嘉雄は友紀奈の姿を見ると、思わず

「友紀奈!」

と叫んでしまった。

いや、叫ばずにはいられなかった。

管に繋がれた友紀奈は、静かだった。

周りの機械だけが、友紀奈の鼓動のように動いていたのだった。

嘉雄は、友紀奈の手を握り続けた。

想像以上に、冷たかった。

嘉雄は、このとき沙耶のことを無意識に思い出していた。