二人は、駅で別れの挨拶をした。

やはり、嘉雄の態度は煮え切らないものだった。

でも、友紀奈はこの時点では仕方ないと思ったのだった。

「じゃ!」

と友紀奈が言った。

もちろん、嘉雄も

「じゃ!また電話する!」

と一言いった。

嘉雄にとっては、精一杯の言葉だった。

友紀奈も頭を縦に振り、手を振った。

二人の間に、微妙な空気が流れた。

友紀奈と嘉雄は、目を見つめあったまま微動だに動かさなかった。

が、電車が動くことにより二人の視線は外れていった。

そして、二人は後悔の別れをすることになるとは、誰も知らなかった。