愛雅はあたしが遅いことに
気付いたのか、立ち止まって
待ってくれていた。
あたしは小走りで愛雅の横に
並んで歩きだした。
「ごめん」
「全然」
愛雅は笑顔でそう言った。
あっという間に家に着いて、愛雅と
手を振ってそれぞれ家に入った。
ー ガチャ
玄関のドアを開けて、「ただいま」と
言って家に入った。
靴を脱いで、お母さんがいるリビング
に入った。
「おかえり、麻帆」
「ただいま」
「麻帆、学校から連絡があって、めまいで
倒れたんだって?」
あぁぁ・・・・いろんな人に迷惑かけちゃった・・・
愛雅にも先生たちにもお母さんにも・・・
「うん・・・それで、病院行った方がいいって・・・
一応・・・」
「じゃ、行こうか?」
「うん」
あたしとお母さんは家を出て、
車に乗り込み、エンジンをかけた。
「しんどくない?大丈夫?」
「今は全然!ごめんね?迷惑かけ
ちゃって・・・」
「いいのよ!」
本当にごめんね?
お母さんやいろんな人に迷惑かけて・・・
あたしのせいで・・・
病院に着き、お母さんが受付に
行ってくれている。
ただの貧血だったらいいんだけど・・・
もっと、大きな病気だったら
どうしよう・・・
すごく、この病院に来てから不安が
増してきた。
「麻帆、もうすぐだから」
「うん」
お母さんが戻ってきて、あたしの
隣に座った。
「大きな病気じゃなかったらいいのにね?」
「・・・うん・・・」
部活が出来なくなるのは嫌だし・・・
みんなに迷惑もかけたくない・・・
ー トントン
誰かがあたしの肩を優しく叩いた。
「麻帆、あたしや愛雅くんや先生たちは
迷惑だなんて、思ってないよ?さっき、
車の中で言ってたでしょ?」
「うん・・・」
「麻帆、もし愛雅くんが病気で倒れたとしたら
どう思う?迷惑だと思う?」
「・・・ううん」
そっか・・・・
あまり、人の気持ち考えていなかったんだ。
自分の中では考えているつもりだったのに・・・
「でしょ?だから、みんな迷惑だなんて思ってない
から、心配しないでいいよ」
「・・・うん」
病院の待合室で待っていると、
看護婦さんが診察室から出てきた。
「安西 麻帆さん、診察室2へ
お入りください」
あたしが呼ばれ、立ち上がり
診察室へ入った。
男の医者が椅子の背もたれに
もたれかかり、座っていた。
「どうされましたか?」
あたしの隣にはお母さんがいなくて
あたしが答えた。
「学校で、体育の授業している途中にめまいで
倒れてしまって・・・」
学校で起きたことをすべて医者に伝えた。
あたしの話をすべて聞いたあとに
難しい顔をした。
「大きな病気だったりしますか?」
「んー・・・」
医者は唸るばかりだった。
「ちょっと、ベーってしてもらえる?
目・・・」
あたしは下まぶたを下に引っ張り
目の赤い部分を見せた。
それを見た医者がまた、難しい顔を
した。
「健康的な色をしてるんだ
がなぁ・・・」
「貧血ではない、ということですか?」
「その可能性はないとは言えない」
「そうですか・・・」
でも、ただの貧血であるっていう可能性は
ないはけでもないんだよね?
部活だけはやめたくなんかない。
あたしには夢があるから。
陸上のオリンピック選手になるという夢が・・・
諦めなくちゃならないのは嫌だよ?
あたしは・・・・
「ま、とりあえず、様子を見て悪化してきたと思ったら、ここに来てください」
「はい、ありがとうございました」
深々と頭を下げて、医者が「お大事に」と言い、それを聞いてから、診察室の扉を開け、お母さんの方へ行った。
なんで、あたしはめまいになったの?
それが気になって仕方がなかった。
その疑問だけが、あたしの頭の中をグルグルと巡り巡る。
「どうだった?麻帆」
お母さんはあたしに優しく問いかける。
「原因不明だって・・・目の赤い部分の色見てもらったんだけど、健康的な色だって。大きな病気ですか?って聞いたら、その可能性はなくはないって・・・」
目から溢れそうになる涙を必死で堪えた。
夢をもしかしたら諦めなくちゃならないかもしれない。
だから、怖いんだ・・・
悪化した時にことを考えるのが・・・
「また、悪化してきたらここに来て欲しいって言ってた」
「そっか・・・でも、早めに見つかると助かるかもしれないからプラスに考えよ?」