前だけを見つめて・・・本気で走る。
ようやく、ゴールテープを切ることができた!
結果は、あたしが勝った。
あたしが差をどんなに広げても、栞菜ちゃんが追いついてきて・・・・この繰り返しだった。
いい勝負だったみたいだ・・・・
「麻帆先輩!ありがとうござうました!今度は勝てるように頑張ります!」
「こちらこそ!応援してるよ?」
「はい!頑張ります!」
あたしたちの勝負は終わり、次々とスタートの練習をして行く。
今日の部活時間が終わった。
「今日、帰ったらゆっくり寝て下さい!以上!話終わります!解散」
部室に行って、制服に着替え、鞄を持って愛雅がいる校門へ走った。
「お待たせ!愛雅!」
「おう!麻帆、やっぱ走んのはぇーな?すげぇよ」
「ありがとう」
あたしが走っているところ、見てくれてるんだね?
そんな小さなことでもあたしの顔がほころんでしまう。
ほころんだ顔を愛雅に見られていなくて、ほっとした。
家に着き、手を振って別れたあと、家のドアを開けて入った。
今日もいつも通り、愛雅とわいわい言いながら登校して、HRが始まった。
ー キーンコーンカーンコーン。
はぁぁ・・・
先生が長々と話をする中、心に中であたしがため息をついた。
朝起きると異常なほど、体がだるくて・・・・
でも・・・今日体育あるし・・・
まぁ・・・でもやろうかな?
放課後、部活あるし・・・保健室行ったら、絶対、「今日は帰る?」って言われて、部活できなくなるかも、だから・・・
保健室には行かないで頑張ろうかな?
机の上で頬杖をついて、大事な話をしているのであろう先生の話を聞かずに違うことを考えていた。
チャイムと同時に先生が出て行き、教室が一気に騒がしくなった。
「麻帆!おはよ?」
「おはよ!心愛ちゃん!」
いつも通り元気に挨拶したつもりなんだけど・・・
「麻帆、今日、どうかした?顔色悪いよ?」
心愛ちゃんにはバレバレみたいで・・・
「全然!何もないし、平気だよ!」
心愛ちゃんに心配されても、あたしは「大丈夫!」とか、「何もないよ!」って言っていつも強がってるんだよね・・・
それがあたしの性格だから、いくら親友の心愛ちゃんでも「体調悪いんだ」とも言えない。
「何もないようには見えないよ?」
「ほんとうだってば!」
「わ、わかった。あまり無理しないでね?」
「わかってるよ!」
ごめんね?
親友の心愛ちゃんに本当のことが言えなくて・・・・
でも、大親友だからこそ、心配してほしくないって思ったんだよ?
「おい、麻帆?大丈夫なのか?気分悪そうだけど・・・HRのときもぼーっとしてたし」
愛雅まで・・・・
あたし・・・・いろんな人に迷惑かけてるんだね?
「全然平気だから気にしないで?」
「あまり無理するなよ?」
「うん」
それだけを言い残して手洗い場へ行き、鏡を見た。
すこし、顔が真っ青だった。
ま、大丈夫だよね?
そう心の中で言って、教室に戻って授業を受けた。
チャイムがなり、休憩時間に入った。
「次体育だよー、麻帆ー」
「うん!頑張ろうね?」
そんな会話をしながら、男子がいない女子だけの教室で着替え、靴を履き替え、グランドに出た。
準備運動や、ストレッチを済ませ、整列し、先生が出欠確認をとって、短距離走のスタートの練習をしていた。
あたしの大好きな種目だ。
「よし!タイムはかるぞ!」
先生があたしたちにそう呼びかけ、スタートの位置に向かう。
「麻帆、陸上部だし、学年1早いんじゃない?タイム!」
「それはないよ・・・あと、規模が狭すぎる・・・・」
「そっか・・・」
タイムを計られる順番は出席番号順らしい。
あたしは「安西」だから、一番最初だった。
スタートラインに並んだ。
「いちについて・・・よーうい!」
ー パーンッ。
体育の授業でも、ピストルを使う。
そのピストルと同時に前屈みで前へ前へと走る。
その時だった。
いきなり、視界がゆがんだ・・・・・
えっ?なに・・・・・
どうなってるの?
体がどんどん横傾いて、地面に倒れこんだ。
「麻帆!?麻帆ー!ま・・・・ほ・・・ま・・・・」
どんどんみんなの声が薄れていき
とうとう、意識を失い、目を瞑ったまま、動かなくなった。
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ー パチパチ。
しばらくすると目が開いた。
そこに見えたのは、綺麗な青々とした青空ではなく、保健室の天井だった。
グラウンドに倒れていたあたしがばぜここにいるの?
「あら・・・起きた?」
「あ、はい」
保健の先生がカーテンを開いて、あたしの様子を見てきた。
「あの・・・・どうしてあたしがここに?」
「岡本くんが運んできてくれたのよ」
岡本・・・・愛雅が?
愛雅、あたしが倒れたのに気づいてくれたの?
「岡本くんがね?いち早く気づいて安西さんを抱えて来てくれたの」
「そうですか・・・」
あたしの声と同時に、保健室のドアが勢いよく開いた。
「あ・・・愛雅?」
急いであたしのところにくてくれたみたいで・・・・息が切れていた。
「心配させんなよ・・・ただの貧血でよかったけど」
「愛雅・・・・ありがとう・・・」
あたしの口から自然と感謝の言葉が出てきた。
「安西さん。一応、病院には行ってね?
貧血じゃないかもしれないから」
「はい!ありがとうございました!」
服装を整えて、愛雅と一緒に
保健室を出た。