「大丈夫だから…」

「……」


私は少しだけ考えたあと、静かにコクりと頷いた。

そして、中学のときのあのトラウマを、稲瀬に全て話した…







……………



「ーー…その日からね、友達に自分をさらけ出すのが怖いんだ。自分の意見とか、正直に言えなくて…全部相手に合わせちゃうの…」


稲瀬に全てを話した私は、どこかスッキリした気持ちになっていた。





「全部相手に合わしとけば、嫌われることはないと思ってた…でも、今回はうかつだったな…相手があんたのこと好きだったんだもん。私全然気付かなかったし…」

「…んなこと、どうだっていいよ」

「…」


本当に、どうでも良さそうに言う稲瀬。




「…でも友達が、私のこと気に入らなくて当然だよね。私…あんたと同じ委員会だってことも、家が近いことも、みんなに言えなかった…」


人気者の稲瀬と交流があることが知れたら、どこかこうなることを予測してたからだと思う…





「…そんなこと、いちいち言う必要あるか?」

「女子はあるんだよ。それにあんただから、余計に」

「よくわかんねえな…」


頭をポリポリとかく稲瀬。



この人…自分がモテてること、ちゃんと自覚してんのかな(汗)





「ま、とにかく…元々お前らはタイプ違い過ぎるから、こうなったからって仲を修復する必要はないと、俺は思う。逆にラッキーだったと思えよ。もう気使わなくていいんだし…」

「うん…まあね」


でも、明日から一人だ(汗)

それは寂しいなあ。





「…過去と向き合うために、しばらくの間だけでもいいから、自分に正直になってみれば?」




稲瀬は自分のジュースの蓋を開けると、そう言って私を見つめた。




「自分を偽ったり、嘘をついたりしないで…お前そのままで過ごしてみたら?」

「…」


正直に…私のまま…か。






「そしたら何か変わるかも…」

「…!」