一人になり、少しずつ落ち着いてきた私は、指でまぶたを触る。

まぶたは腫れていて、きっと赤くなってると思う…




「…はあ」


大きなため息をつく。



稲瀬がいなかったら、私どうなってたかな…

考えるだけでツライ。




「…ん」

「…!」


目の前には、炭酸の缶ジュースが。

顔を上げると、稲瀬が私にジュースを差し出していた。



「ありがとう」


私は稲瀬から、ジュースを受け取る。




さっきのことを思い出して、また泣きそうになる…


中学最後のあの時のこと、最近は思い出さなかったのにな…

さっきみたいなこと言われると、普段閉じ込めてることが、よみがえってくる…


心に鍵をしてても、ふとしたことでその鍵は開いてしまうんだ。






「お前が泣いたのは…さっきのあの女のせいだけ?」


…!


稲瀬は私の隣に座り、ボソッとそう言った。

私は、すぐに言葉を返せないでいる…





「それとも…もっと他にあるんじゃねえの?」

「………」


どうしよう…

稲瀬ってば、勘づいてる…


あれだけのことで、こんなに泣いたからかな。


稲瀬に…私のトラウマを話す…?

でも…引かれたら嫌だな…




「それを聞いたら、俺が引くとか思ってる?」

「え。」


なんで、考えてることわかるの(汗)

稲瀬って、結構スルドイ…





「だったらガッカリだな…」


…。


稲瀬の顔からして、本気で言ってると思う。

でも…




ぎゅっ



っ!


突然、私の手を握ってくる稲瀬。

今は落ち着いているので、めちゃくちゃ恥ずかしい…!