教室が近づいてくると、私は自然に稲瀬から離れて、やや遅れをとって教室に入った。

稲瀬と一緒にいるところを、誰かに見られたりしたら、絶対騒がれるに決まってる…





教室に入ると…仲のいい友達グループたちが、教卓の前に固まっていた。




「おはよー」


友達に近づき、いつものように挨拶をする私…しかし…




「・・・・・」


っ!



友達は、誰一人挨拶を返してくれなかった。

おまけに、みんなでヒソヒソと話をして、私を無視して離れていった…




なんで…

どうして…


わけのわからないまま、私はその場に立ち尽くすしかない…




キーンコーン

カーンコーン



「おはよう!出席とるよー」


チャイムが鳴り、担任が教室に入ってくる。

なんとか席についた私の、考えることは友達グループのこと…


よみがえる過去…

張り裂けそうな胸…



がやがやとうるさい教室の中、私の耳には何も入ってこなかった。


そして、午前中の各休み時間…

友達に話しかけようとしたが、やっぱり無視されてしまった…






「…あ、あのっ」


昼休み

私はお弁当の入ったカバンを持って、思いきってみんなに話しかけた。





「…なに?お弁当食べたいんだけど…」


冷たい言い方…

でも、引き下がれない。




「あ、私みんなになにかしちゃったのかな…」

「……」

「もししたなら、謝るからっ…」

「人のこと裏切ったくせに、よくそんなこと言えるよね」


…っ!



裏切った…って…?






「なんのこと…?」

「とぼけんなし。私が稲瀬くんのこと好きだって知ってて、裏で稲瀬くんと付き合ってたくせに…」



!?




「私そんなこと聞いてないっ…」

「は?言わなくてもわかるでしょ?あれだけ稲瀬くんのことが、会話に出てたじゃん!なのに、校舎裏で会ったり…一緒に帰ったり…買い物したり……今日は一緒に登校してたでしょ?」