「なっ、なにそれ!?なんのこと言ってるのっっ!!?」

「とぼけんなよ。いつも藤川に気づかれないように、悠のこと見てるくせにー」

「……っ!」


その一言で、何も言い返せなくなってしまった…

顔はタコのように真っ赤になり、エアコンの風が直に当たる場所にいるにも関わらず、体は暑くなり汗が吹き出た。




永井くんの言ったことは…案外外れてはいなかった…

高校に入学して、数日後遅れで初登校してきた稲瀬くんを初めて見たあの日…


こんなにカッコいい人が地球にいたのか!

…と思うくらい、稲瀬くんに釘付けになっていた私…


恋愛感情の好きではなかったけど、彼のファンになりかけていたのは事実。

だからそ!

陽葵ちゃんが落としたヅラにゃんこを届けた帰り道、稲瀬くんに駅まで送ってもらった時は、心臓が飛び出そうになったんだ…

でも…





「…最初から…私の入り込む隙間なんてなかったんだ…」

「…?」


私はあの日の帰り道での稲瀬くんとの会話を、永井くんに話した。








…………



「…」

「…」

「あっち~風呂入りて~」


陽葵ちゃんちからの帰り道。

稲瀬くんに送ってもらえることになった…

歩いてもう数分経ったけど、まだ無言の私と稲瀬くんと、ぶつぶつと独り言を言う稲瀬くんの弟の。

確か、修君だっけ?



あの稲瀬くんが、私の隣にいる!

しかも、あの稲瀬くんが私を送ってくれてるなんて…!


やばい!

本当死にそうっ…



あ、でも駅が見えてきた!




「も、もうこの辺でいいよ!駅前だし人気もあるし明るいからっ!」


このままだと、心臓が持たないしっ





「…そ、じゃあ…気を付けて…」

「送ってくれてありがとう!藤川さんに、よろしく言ってね」


よし。

なんとか笑顔で言えた!





「ああ…お前さ…藤川のことどう思う?」

「え?」


妙に真剣な表情の稲瀬くん。





「…藤川さん?いい子だと思うけど…」


美人だし、大人っぽいから、憧れちゃう♪




「もし…あいつのこと少しでも気に入ってくれたなら、仲良くしてやってくれない?あいつ…友達運悪いからさ…でも、お前ならなんかこう…仲良くしてくれそうだし」

「…!」



まるで…

自分の彼女のために言っているようだった…