「これもかけて…」

「・・・・うん」


今度は、大量の服を渡してくる稲瀬。



それよりも…

もっと気になることが…




「ねえ…」

「…ん?」


稲瀬は、荷物を整理しながら返事をする。






「本当に…一緒に住んでいいの?」

「え…」


私がそう言うと、稲瀬は手を止めて私の方を見た。




「…何で?」

「…だって…お母さんが強引に提案したことでしょ?稲瀬たちが嫌がってるなら、無理してこんなこと…」

「…俺は嫌がってないけど…」




キョトンとした顔をする稲瀬。





「え、でも…女の私と一緒に住むんだよ!?妹だっているし…それに私クラスメイトだしっ」

「…うん。だから?」

「“だから?”って…(汗)」


この人、あんまり深く考えてないでしょ?




「お前のお袋の言ってること、俺はなんとなくわかけるけど…」

「わ、わかるの!?」

「ここに女2人だけで住んでるのは、物騒だと思う。お互い親が近くいないなら、俺たちが一緒に住むっていうのは…変なことじゃないと思うけど」

「・・・・」


まあ、そうなんだけど…

そうなんだけどもっ!





「…でも、俺たちと暮らしたくないなら…それは仕方ないけど…」






「違う!違うっ!そうじゃないっ!私は住みたいよ!あ…」

「…!」


“住みたい”って変だよね?

でも、なんて言ったらいいの!?




「…と、とにかく…嫌じゃないから。私は!稲瀬が嫌じゃないなら…いい」


なんか恥ずかし。





ぽん







すると、稲瀬が私の頭を撫でた。

顔を見上げると…稲瀬は、微笑んでいた。





「ふ、服…ハンガーにかけちゃうねっ」

「頼む」


稲瀬から目をそらし、ドキドキしている自分を、必死に隠しながらテキパキと動き、おかげで片付けは早く終わった。







カタ

カタカタ…




ん…?


次の日の早朝

微かな、物音で目が覚めた私…


そして起き上がり、部屋を出て階段をかけ下りた。





「お母さん!」

「あ、陽葵!」


階段を降りると…お母さんと聡美さんが、ちょうど玄関で靴を履いていた。




「もう行くの…?」

「うん、昼前の飛行機に乗らないといけないから」

「そう…」