悟りを悟った 仏の相澤先生。
きっと奥深い意味が含まれてるのだけは わかるけど…。
あたしは いつか仏の この ありがた〜い お言葉の意味を理解 出来る日が来るのだろうか。
それに仏の先生がここまで おっしゃるんじゃ
逆らっちゃバチが当たりそう。
「わかりました。
佐藤さんの好意に甘えさせていただきます」
「おお。勉強、がんばりたまえ!」
「はい!」
「予定では いつもと同じ登校時間で午前終了なので お昼の用意はしなくてもOKだ」
「わかりま…」
「相澤せんせー」
と あたしと先生の間に割り込んできたのは
「先生、今日のこと わかってますよね?」
「もちろんだ」
おっとりとした話し方が特徴の ほのかちゃんだった。
「ほのか、先生のこと待ってますー」
なに何?
今日 先生がおめかししてるのは奥さんとデートじゃなく ほのかちゃんとデートだったのか!
いけないものを知ってしまった!
と思ってたら
「琴羽ちゃんも 良かったら来てね」
「へっ?」
「やだー その様子じゃ知らなかったみたいだね。
今日 ほのかの誕生日なの。
月島ホテルで誕生日パーティーするから、出来ればクラスみんなに来て欲しいの」
まじ!!
どうしよう!
「……誕生日おめでとう」
この言葉しか出てこなかった。
やばい!
笑顔が引きつる。
月島ホテル
水野ほのか
お父さんは超一流企業、某車メーカーの専務。
また超有名株トレーダーとしての顔も持つ。
書籍も何本か出版し、その全てはベストセラーとなっている。
そんなセレブが この高校を選んだ理由は もちろん blessの大ファンだからである。
なんでもデビューして すぐにファンクラブの会員になったとか…。
午前中の授業は全然、身につかなかった。
「お昼だ、お昼〜」
「お腹 空いちゃった〜」
お昼休みになり お弁当を食べながら まりんちゃん、美緒ちゃんに問いだたす。
「今日って ほのかちゃんの誕生日パーティーがあるんだね。
あたし、知らなかった!」
「あー、そーだ。言ってなかったね〜」
いやいや そんな のんきに答えられるとは…。
「ほのかちゃんの誕生日パーティーに出席しなかったらヤバいよね?」
「そー思って、うちらは行くけど…」
「琴羽ちゃんは妹ちゃんがいるからさ」
……。
そっか…。
あたしを想って伝えなかったんだ。
一瞬、仲間外れにされたのかと思ってしまった自分が恥ずかしい。
「ほのかちゃんがプレゼントも出席費もいらないから ただ、来て欲しいって、来てくれるだけで嬉しいんだって」
ほのかちゃんはクラスのリーダー的存在、瑞季ちゃんの いつも側にいる。
それに ほのかちゃんは、セレブなのに気取らず、誰にでも同じ対応するコだから…
あの ほんわかした人柄なので馴染みやすいコ。
瑞季ちゃんも何も言ってこないし、ほのかちゃんだって“良かったら来てね”だし“出来ればクラスみんなに来て欲しいの”だったから…。
あたしは出席しなくて済むんだ。
ほー と胸を撫で下ろした。
「ねぇ、昨日 お家にいたのって おばあちゃん?」
「そーだよ。明日まで こっちに居てくれるの」
「おばあちゃん、居るなら 今日のパーティーに行けるね!」
!!
しまった!
自分からバカしちゃった!
「いや〜、準備してなかったからムリだよ」
と笑顔で応えた あたしの声は届かず
「勉強 勉強の毎日だし たまには息抜きしないと人生、やってらんないよね」
おいおい、高1のセリフかい!
「ほんと、受験が終わって 憧れの学校に入ったら入ったで勉強ばかり」
「そう!遊ぶ時間なんてないもの」
「こんなときぐらいしか遊べないんだし、琴羽ちゃんがいないと心から楽しめない!」
え〜〜!
「月島ホテルの最寄り駅で待ち合わせしよ!」
「パーティーに着てく服なんてな…」
「きっと食べきれないぐらい、美味しい物が出てくるんだろうね」
「琴羽ちゃん、お腹ペコペコで行くんだよ」
勝手に話が進んでる!
「もしかしたら お父さんの仕事上の関係で著名人も来るかな〜?」
「そーだね、来そう!」
……。
いつも2人には助けてもらってるし あたしが水を指すようなこと出来ない。
確かに たまには息抜きも いーかな。
「ねぇ、2人はどんな服装で行くの?」
「20歳に着ようと思ってた お母さんのお下がりの振り袖を着てくよ。
そんなに派手めじゃなくて渋めの色だから大丈夫だと思うんだ」
なるほど美緒ちゃんは着物か。
「あたしはロングワンピだけど、どこかのプリンセスみたいで上に何か羽織れば普段使いも いけるかも!
って買ったの」
ほー ワンピね。
「なるほど、なるほど!わかった!」
あのブラウスは どーだろ…。
でもスカートじゃないと変だよな。
あたし スカートなんて持ってないし…。
なんでパンツとショーパンしか持ってないんだろ。
クローゼットの中を思い出してみるがすかすかの中身ではコーデが決まらない。
早く家に帰りたい〜!
午後の授業も やっぱり身につかなかった。
『キーン コーン カーン コーン』
待ちに待った、本日の学校の終了を知らせるチャイムが鳴り響く。
美緒ちゃんも この時を待ってたのか あわてて帰宅の準備をしていた。
「美容室に予約を入れてて、着物の着付けと髪型のセットに時間がかかるから帰るね」
「うん!」
「6時に駅で待ち合わせだよね!」
「そう!パーティーは6時半から始まるから」
「オッケー!」
「「「じゃあ、駅でね」」」
今日のクラスの雰囲気は いつもと違っていた。
雑談をして楽しむ人など誰1人居らず
各々が笑顔で帰宅へと急いでいた。
そして あたしは急遽の出来事のため笑顔では いられなかった。
立ちこぎで一目散へと我が家に突き進む。
「おばあちゃーーん!」
「琴羽、帰って来たときゃ きちんと てでーま、って挨拶しねぇとダメだんべ」
「はい!ただ今、帰りました」
「お帰り。
んで どーしたんだ?」
「今日、友達の誕生日パーティーに招待されたんだけど着てく服がないの〜」
「んじゃ、そこの商店街の洋服屋で新しいの買ってやっから!」
「それが ふつーのパーティーじゃなくて
友達は超セレブであの4年連続3つ星ホテル、
月島ホテルがパーティー会場なの!」
「なにぃ!月島ホテルだって!!」
「どーしよう!」
「おらも一度でえーから 月島ホテルでランチをしてみてぇって夢見てたんだ」
「将来、初給料いただいたときに ご馳走してあげるよ」
「おお、長生きして楽しみに待ってっから!」
「って今は それどこじゃなくて〜」
「……琴羽、よーく思い出してみっと 1年以上めぇに歌子が選んだドレスがあったぺよ!
あれは貸衣装だったのか?」
「1年以上前、お母さんが選んだ?」
!!!
あった!
「そーだ!あったよ!!」
「よがったなぁ。これで着てく服は だいじだ!」
「急いで着替えてくる!」
「ああ、おらは花音を迎えに行ってくっから」
どかどかと大きな足音を立てて廊下を渡り自分の部屋のクローゼットへと急ぐ。
おばあちゃんに そんな大きい音を立てて歩いたら家に穴が空いちゃう!
って いつも注意されてるけど そんなことに意識出来るほど今の あたしは心の余裕がなかった。
…が
「いっ!
いったーー!!」
バチが当たった…。
ドアを開けて すぐ目の前に花音のラッパのオモチャが放置されており、もろ踏んづけてしまった。
足は、もちろん痛いけど それよりも花音の大事なオモチャを壊しちゃったら後々めんどくさいので自分の足の心配よりも真っ先にオモチャの確認をした。
やば!
軽くヒビが入ってる…。
音に支障はないか試しに吹いてみたところ…。
うん、音は問題なく出る!
ラッパが壊れるのが先か、花音があきれるのが先か…。
どうか後者であって欲しい!
と願わずにはいられなかった。
隣の隣の家の大樹くんのお古の貰い物ばかりのオモチャ
父方も母方の両祖父母が1人の かわいい孫に甘いおかげで新品同様のオモチャが花音に回ってくる。
そのオモチャが至るところに転がってるから明日の午後に片付けよう。
でないと 寝る場所まで占領される勢いだし
何より また踏む可能性が高い。
回避 出来る 危険は片付けとかないと。
お目当てのクローゼットの扉に手を伸ばしアコーディオン型の扉を開けて…
ピンクのドレスを探す。
隅っこに追いやられた ドレスは その存在を主張することなく 静かに眠っていた。
ノースリーブで膝丈のスカートに
腰に でっかいリボンが付いた
ピンクのドレス。
お母さんと一緒に買い物した 最後の品がこのコ。
あのとき すっごい笑ってたけど
本当はガリガリに痩せちゃって
体調が良くないのを我慢して あたしに付き合ってくれたんだと思う。
クリーニングに出して その後は袖を通していない。
ビニール包装から取り出し改めてドレスを見つめる。
…かわいい。
サイドファスナーを下げて着用した。
きっと奥深い意味が含まれてるのだけは わかるけど…。
あたしは いつか仏の この ありがた〜い お言葉の意味を理解 出来る日が来るのだろうか。
それに仏の先生がここまで おっしゃるんじゃ
逆らっちゃバチが当たりそう。
「わかりました。
佐藤さんの好意に甘えさせていただきます」
「おお。勉強、がんばりたまえ!」
「はい!」
「予定では いつもと同じ登校時間で午前終了なので お昼の用意はしなくてもOKだ」
「わかりま…」
「相澤せんせー」
と あたしと先生の間に割り込んできたのは
「先生、今日のこと わかってますよね?」
「もちろんだ」
おっとりとした話し方が特徴の ほのかちゃんだった。
「ほのか、先生のこと待ってますー」
なに何?
今日 先生がおめかししてるのは奥さんとデートじゃなく ほのかちゃんとデートだったのか!
いけないものを知ってしまった!
と思ってたら
「琴羽ちゃんも 良かったら来てね」
「へっ?」
「やだー その様子じゃ知らなかったみたいだね。
今日 ほのかの誕生日なの。
月島ホテルで誕生日パーティーするから、出来ればクラスみんなに来て欲しいの」
まじ!!
どうしよう!
「……誕生日おめでとう」
この言葉しか出てこなかった。
やばい!
笑顔が引きつる。
月島ホテル
水野ほのか
お父さんは超一流企業、某車メーカーの専務。
また超有名株トレーダーとしての顔も持つ。
書籍も何本か出版し、その全てはベストセラーとなっている。
そんなセレブが この高校を選んだ理由は もちろん blessの大ファンだからである。
なんでもデビューして すぐにファンクラブの会員になったとか…。
午前中の授業は全然、身につかなかった。
「お昼だ、お昼〜」
「お腹 空いちゃった〜」
お昼休みになり お弁当を食べながら まりんちゃん、美緒ちゃんに問いだたす。
「今日って ほのかちゃんの誕生日パーティーがあるんだね。
あたし、知らなかった!」
「あー、そーだ。言ってなかったね〜」
いやいや そんな のんきに答えられるとは…。
「ほのかちゃんの誕生日パーティーに出席しなかったらヤバいよね?」
「そー思って、うちらは行くけど…」
「琴羽ちゃんは妹ちゃんがいるからさ」
……。
そっか…。
あたしを想って伝えなかったんだ。
一瞬、仲間外れにされたのかと思ってしまった自分が恥ずかしい。
「ほのかちゃんがプレゼントも出席費もいらないから ただ、来て欲しいって、来てくれるだけで嬉しいんだって」
ほのかちゃんはクラスのリーダー的存在、瑞季ちゃんの いつも側にいる。
それに ほのかちゃんは、セレブなのに気取らず、誰にでも同じ対応するコだから…
あの ほんわかした人柄なので馴染みやすいコ。
瑞季ちゃんも何も言ってこないし、ほのかちゃんだって“良かったら来てね”だし“出来ればクラスみんなに来て欲しいの”だったから…。
あたしは出席しなくて済むんだ。
ほー と胸を撫で下ろした。
「ねぇ、昨日 お家にいたのって おばあちゃん?」
「そーだよ。明日まで こっちに居てくれるの」
「おばあちゃん、居るなら 今日のパーティーに行けるね!」
!!
しまった!
自分からバカしちゃった!
「いや〜、準備してなかったからムリだよ」
と笑顔で応えた あたしの声は届かず
「勉強 勉強の毎日だし たまには息抜きしないと人生、やってらんないよね」
おいおい、高1のセリフかい!
「ほんと、受験が終わって 憧れの学校に入ったら入ったで勉強ばかり」
「そう!遊ぶ時間なんてないもの」
「こんなときぐらいしか遊べないんだし、琴羽ちゃんがいないと心から楽しめない!」
え〜〜!
「月島ホテルの最寄り駅で待ち合わせしよ!」
「パーティーに着てく服なんてな…」
「きっと食べきれないぐらい、美味しい物が出てくるんだろうね」
「琴羽ちゃん、お腹ペコペコで行くんだよ」
勝手に話が進んでる!
「もしかしたら お父さんの仕事上の関係で著名人も来るかな〜?」
「そーだね、来そう!」
……。
いつも2人には助けてもらってるし あたしが水を指すようなこと出来ない。
確かに たまには息抜きも いーかな。
「ねぇ、2人はどんな服装で行くの?」
「20歳に着ようと思ってた お母さんのお下がりの振り袖を着てくよ。
そんなに派手めじゃなくて渋めの色だから大丈夫だと思うんだ」
なるほど美緒ちゃんは着物か。
「あたしはロングワンピだけど、どこかのプリンセスみたいで上に何か羽織れば普段使いも いけるかも!
って買ったの」
ほー ワンピね。
「なるほど、なるほど!わかった!」
あのブラウスは どーだろ…。
でもスカートじゃないと変だよな。
あたし スカートなんて持ってないし…。
なんでパンツとショーパンしか持ってないんだろ。
クローゼットの中を思い出してみるがすかすかの中身ではコーデが決まらない。
早く家に帰りたい〜!
午後の授業も やっぱり身につかなかった。
『キーン コーン カーン コーン』
待ちに待った、本日の学校の終了を知らせるチャイムが鳴り響く。
美緒ちゃんも この時を待ってたのか あわてて帰宅の準備をしていた。
「美容室に予約を入れてて、着物の着付けと髪型のセットに時間がかかるから帰るね」
「うん!」
「6時に駅で待ち合わせだよね!」
「そう!パーティーは6時半から始まるから」
「オッケー!」
「「「じゃあ、駅でね」」」
今日のクラスの雰囲気は いつもと違っていた。
雑談をして楽しむ人など誰1人居らず
各々が笑顔で帰宅へと急いでいた。
そして あたしは急遽の出来事のため笑顔では いられなかった。
立ちこぎで一目散へと我が家に突き進む。
「おばあちゃーーん!」
「琴羽、帰って来たときゃ きちんと てでーま、って挨拶しねぇとダメだんべ」
「はい!ただ今、帰りました」
「お帰り。
んで どーしたんだ?」
「今日、友達の誕生日パーティーに招待されたんだけど着てく服がないの〜」
「んじゃ、そこの商店街の洋服屋で新しいの買ってやっから!」
「それが ふつーのパーティーじゃなくて
友達は超セレブであの4年連続3つ星ホテル、
月島ホテルがパーティー会場なの!」
「なにぃ!月島ホテルだって!!」
「どーしよう!」
「おらも一度でえーから 月島ホテルでランチをしてみてぇって夢見てたんだ」
「将来、初給料いただいたときに ご馳走してあげるよ」
「おお、長生きして楽しみに待ってっから!」
「って今は それどこじゃなくて〜」
「……琴羽、よーく思い出してみっと 1年以上めぇに歌子が選んだドレスがあったぺよ!
あれは貸衣装だったのか?」
「1年以上前、お母さんが選んだ?」
!!!
あった!
「そーだ!あったよ!!」
「よがったなぁ。これで着てく服は だいじだ!」
「急いで着替えてくる!」
「ああ、おらは花音を迎えに行ってくっから」
どかどかと大きな足音を立てて廊下を渡り自分の部屋のクローゼットへと急ぐ。
おばあちゃんに そんな大きい音を立てて歩いたら家に穴が空いちゃう!
って いつも注意されてるけど そんなことに意識出来るほど今の あたしは心の余裕がなかった。
…が
「いっ!
いったーー!!」
バチが当たった…。
ドアを開けて すぐ目の前に花音のラッパのオモチャが放置されており、もろ踏んづけてしまった。
足は、もちろん痛いけど それよりも花音の大事なオモチャを壊しちゃったら後々めんどくさいので自分の足の心配よりも真っ先にオモチャの確認をした。
やば!
軽くヒビが入ってる…。
音に支障はないか試しに吹いてみたところ…。
うん、音は問題なく出る!
ラッパが壊れるのが先か、花音があきれるのが先か…。
どうか後者であって欲しい!
と願わずにはいられなかった。
隣の隣の家の大樹くんのお古の貰い物ばかりのオモチャ
父方も母方の両祖父母が1人の かわいい孫に甘いおかげで新品同様のオモチャが花音に回ってくる。
そのオモチャが至るところに転がってるから明日の午後に片付けよう。
でないと 寝る場所まで占領される勢いだし
何より また踏む可能性が高い。
回避 出来る 危険は片付けとかないと。
お目当てのクローゼットの扉に手を伸ばしアコーディオン型の扉を開けて…
ピンクのドレスを探す。
隅っこに追いやられた ドレスは その存在を主張することなく 静かに眠っていた。
ノースリーブで膝丈のスカートに
腰に でっかいリボンが付いた
ピンクのドレス。
お母さんと一緒に買い物した 最後の品がこのコ。
あのとき すっごい笑ってたけど
本当はガリガリに痩せちゃって
体調が良くないのを我慢して あたしに付き合ってくれたんだと思う。
クリーニングに出して その後は袖を通していない。
ビニール包装から取り出し改めてドレスを見つめる。
…かわいい。
サイドファスナーを下げて着用した。