「あそう。ならもう行くわ」



「へ?」



行くわ?


どこへ?



「会社の飲み会。あんたの顔見るために戻って来たど、今日は本社から偉い人が
くるらしいし、顔出しとかないとまずいのよ。
あの人も今日は遅いらしいし、行ってもいいでしょ?」



あの人、と言うのは父さんのことだ。



「うん。行ってもいいよ」



どうせいつもいないしねぇ。


今更だ。



「ありがと。行ってくるわ」


心のこもらないありがと。



それにとりあえず頷いた。



母さんは、そのまま何もすることなく家を出た。



それを見送ってから深々と深呼吸。



あぁ、息が苦しかった。



別に、虐待を受けてたわけでもないけど、オレはどうも母さんや父さんが苦手だ。



2人のおかげで今不自由なく過ごせているのはわかっているが、それと好みは別だと思う。



1人になった部屋で、ぼうっとした。



これは母さんに言ったとおり、寝るべきかなぁ。



そう思っていたら、また携帯が鳴った。



送信者は桜。