礼二も中尾の前で素直な自分を出せるのではないだろうか、

これは里子の想像でしかないが、礼二にどんな悪辣な言葉をぶつけられても、飄々とした態度で近づく中尾は、

やはり優しいお兄ちゃんに見えてしまう。

始業のチャイムが鳴り、一限目、物理の授業が始まった───







19

昼休み。中尾真也は学生食堂へ向かった。

収容人数百五十名ほどの大食堂だ。天井は吹抜けとなり、二階にある喫茶店から食堂が見渡せる構造となっている。

彼はA、Bを見比べ、少し考えた末、洋風のBランチを選んだ。今日のメニューはトンカツだ。

中尾はトレイを持ち、彼女の元へと足を運ぶ。

彼女は今日もサンドウィッチを食べている。彼女とは夏休みに急激に仲良くなった。

一定の友人を作らないように決心していた中尾にとって、それは想定外の出来事だった。

「お里はサンドウィッチさん好きなようだね。」

テーブル席につくなり、中尾は里子に話し掛けた。

両手でサンドウィッチを口に運ぶ彼女は、中尾を見ずにこくりと頷いた。

一学期まで里子は教室の自席で昼食をとっていた。

食事後、何をするわけでもなく席でずっと俯いているのだ。

二学期になり、食堂で一緒に飯喰わないか、と里子を誘ったのは中尾だ。

誰とも交流をもたず、わざと他人を寄せつけない身なりを装う。

それが里子の生き方なのだと自己解釈していた。

中尾は彼女の意志を尊重し、深く関わることのないように接していた。

しかし夏休み、ふとしたきっかけで里子と時間を共にするようになり、彼女を知った。

里子には水谷 玲という友人がいた。この時、仲間礼二とも出会った。

中尾は状況をうまく飲み込み、いつも通りの明るいキャラクターで皆と接した。

雑談室で会話をしていると、ふと感じた。

それは表現し難い居心地の良さだった。抽象的に例えるなら似た者同士。

礼二、里子、玲、自分はこの三人と似ている、そう直感した。

些細なことすべてにおいて波長が合うのだ。

他の三人がどう思っているのかはわからないが、少なくとも中尾はそう感じ取った。

純粋に三人と仲良くなりたい。友達と呼べる人間が欲しい。

彼はそう思っていた───