里子がいじめに立ち向かう姿を思い出したのだろうか、少し明るさを取り戻しながら喋りだした。
小学六年の修学旅行のグループ決めの時、
玲はどのグループにも入れてもらえず途方に暮れていると、里子が自分のグループに入りなよと誘ってくれた。
しかし里子のグループ内から非難が上がり、玲はグループに入ることができなかった。
その時、里子はじゃあ自分がグループを抜けるとあっさり言ったのだ。
結局修学旅行は里子と玲の二人で行動を共にすることになった。
玲は里子に悪いと思いながらも嬉しさでいっぱいだったという。
だがその修学旅行がきっかけに里子も一部の女生徒から疎外され始めたのだ。
当時玲は里子を巻き込んでしまったのは自分のせいだと、彼女に涙ながらに謝った。
何度もくり返し謝罪したのだという。だが里子は玲のせいではないと執拗に言い返した。
その頃里子から一生忘れない言葉をもらったと玲はいった。
「私がさっちゃんにどうしていつも助けてくれるのって訊いたら、
さっちゃんは『玲ちゃんは友達だもん』って言ってくれたの。
私ね、子どもながらに、友達って簡単な言葉がこんなに嬉しくて、あったかいものだと初めて知ったんだ」
玲は礼二の顔を見て唇を弛ませた。
友達という言葉が礼二の胸に何かを詰まらせた。それは硬くて黒い異物のような物体だった。
「さっちゃんの武勇伝はまだまだあるよ。でも、仲間くん塾あるんじゃないの───大丈夫?」
礼二が毎日塾があることを知っていたので、玲は気遣って訊いたのだ。
はっ、とした表情で礼二は腕時計を見た。時刻は五時を大分過ぎていた。
「やべっ」
礼二は慌てて立ち上がると、ちらりと玲の顔を見た。
「塾頑張ってね」彼女はおだやかな表情で礼二を見ている。
「また、水谷さんとこうして話したいんだけど…」
そういってから彼は照れ隠しにそっぽを向いた。
「いつでもいいよ」
玲の口調はあくまでも柔らかかった。
「今度は家まで送ってくから」
「うん」
玲の言葉を聞くと同時に礼二は駆け出した。途中振り返り玲に手を振った。
彼女は、はにかみながら手を振り返してくれた。
小学六年の修学旅行のグループ決めの時、
玲はどのグループにも入れてもらえず途方に暮れていると、里子が自分のグループに入りなよと誘ってくれた。
しかし里子のグループ内から非難が上がり、玲はグループに入ることができなかった。
その時、里子はじゃあ自分がグループを抜けるとあっさり言ったのだ。
結局修学旅行は里子と玲の二人で行動を共にすることになった。
玲は里子に悪いと思いながらも嬉しさでいっぱいだったという。
だがその修学旅行がきっかけに里子も一部の女生徒から疎外され始めたのだ。
当時玲は里子を巻き込んでしまったのは自分のせいだと、彼女に涙ながらに謝った。
何度もくり返し謝罪したのだという。だが里子は玲のせいではないと執拗に言い返した。
その頃里子から一生忘れない言葉をもらったと玲はいった。
「私がさっちゃんにどうしていつも助けてくれるのって訊いたら、
さっちゃんは『玲ちゃんは友達だもん』って言ってくれたの。
私ね、子どもながらに、友達って簡単な言葉がこんなに嬉しくて、あったかいものだと初めて知ったんだ」
玲は礼二の顔を見て唇を弛ませた。
友達という言葉が礼二の胸に何かを詰まらせた。それは硬くて黒い異物のような物体だった。
「さっちゃんの武勇伝はまだまだあるよ。でも、仲間くん塾あるんじゃないの───大丈夫?」
礼二が毎日塾があることを知っていたので、玲は気遣って訊いたのだ。
はっ、とした表情で礼二は腕時計を見た。時刻は五時を大分過ぎていた。
「やべっ」
礼二は慌てて立ち上がると、ちらりと玲の顔を見た。
「塾頑張ってね」彼女はおだやかな表情で礼二を見ている。
「また、水谷さんとこうして話したいんだけど…」
そういってから彼は照れ隠しにそっぽを向いた。
「いつでもいいよ」
玲の口調はあくまでも柔らかかった。
「今度は家まで送ってくから」
「うん」
玲の言葉を聞くと同時に礼二は駆け出した。途中振り返り玲に手を振った。
彼女は、はにかみながら手を振り返してくれた。