玲は云う。なぜ自分がいじめの対象になったのか未だにわからないが、

多分いつもおどおどしていたり、口吃ったような話し方が原因かも知れないといった。

小学二年生まで学校に行きたくないと何度も無断欠席したことや、

女子生徒から集団で無視されていた暗い過去を明かした。そして、すごく辛かった、と付けた。

「でもね。そんな私を救ってくれたのが、さっちゃんなの」

彼女は言葉を続ける

「さっちゃんだけは私を差別しなかった。

クラスの女子が少しでも私に嫌がらせしたりすると、絶対止めてくれたの。

見てみぬふりはしなかった。時には喧嘩になるくらい激しくなったこともあったよ」

礼二は黙って玲の話を聞いていた。彼女は続けて語る。

里子のおかげで大分減ったのだが、一部の心ない女生徒からのいじめは終わらなかった。里子の知らないところで陰険な嫌がらせが続いた。

「小学六年生のときにね。ある出来事がきっかけで、さっちゃんもいじめの対象になっちゃったの。私のせいで」

玲の声は萎れていた。

思い出したくない過去なのだろうか。礼二はある出来事とは何か気になったが、訊くのを躊躇った。

玲は礼二に語るわけでもない口調で、過去の話を自分に言い聞かせるように喋り始めた。

「でもさっちゃんはいじめに屈さなかった。真っ向勝負って感じでいじめに立ち向かったの」

玲はそこまでいうと、何かを思い出したように

「あっ、ある出来事っていうのはね」そういうと彼女は軽く咳払いをした。