──当初、勉強と玲が脳内でごっちゃになり、勉強がはかどらなかった。だから勉強と恋の思考を分別的に訓練した。そうすると勉強している時、玲が頭に浮かぶことに、苦労しなくなった。もやもやした感情が薄れたのだ。

ドン小谷はホワイトボードを叩くと叫んだ「受験戦争に浸かったお前らに夏休みは存在しねー」

──恋と勉強の切り替えを脳が学習したといえる。

ドン小谷は講習を開始した。

──しかし、花火大会などという新しいワードが、脳内にインプットされると、たちまち脳から学習が追い出され、花火大会に玲と一緒に行く妄想が、すべてを支配する。

──礼二の頭の中は、花火大会から勉強へと、気持ちの切り替えを必死に行なわれていた。

そんな礼二の様子を露知らず、ドン小谷は叫び声をあげ、激しく唾を飛ばしながら講習を続けていた。

「お前らは人間じゃない。学習マシーンだ。じゃなきゃ受験戦争に負けちまうんだ。勉強ターミネーターになるんだ」

ドン小谷の勉強ターミネーターという意味不明な単語に、胸の内でツッコミをいれた礼二は、やっと思考を勉強に移すことができた。