八月十日。天候は快晴。照りつける太陽が、この上なく眩しい。まるで青春を後押しするような猛暑だ。

九時四十分。仲間礼二、中尾真也、森永里子、水谷 玲は、プールにやってきた。

高さのある急降下スライダー、四人乗りの円形ボートで、曲がりくねった筒を滑る急流すべり、高さ最大十メートルのジャンプ台、様々なアトラクションを設ける大規模なプールだ。

礼二は水谷 玲の水着姿を期待せずにいられなかった。わくわくが波のように押し寄せてくる。中尾がにやにやと表情を浮かべながら、彼の顔を覗き込んだ。

なんだよ──と言いたいところだが、礼二は彼から目を背けた。

塾をサボタージュしたのは気が引けるが、玲とどうしても遊びに行きたかった。彼の恋はもう走り始めているのだ。

朝早く来たので、入場者はまだ少なかった。玲と里子が手提げ鞄を持ち、更衣室から出てくるのを、礼二は目撃した。彼女らはTシャツを着ていた。Tシャツの下から伸びた、玲の白い素足に、礼二はしばらく釘づけになった。

彼女らにまだ気づいていない中尾に、礼二は「おい、あれ」指差して教えた。中尾は、すぐさま大声で二人を呼んだ。礼二たちに気づいた彼女らは、真っ直ぐ近付いてきた。

この時、近付いてくる里子を見た礼二は、彼女のスタイルが意外に良いことを知った。丈の長いスカートの制服姿。私服も地味で、野暮ったい服装しか見たことのない礼二にとって、里子のすらっとした綺麗な脚線美は、彼の胸をどきっとさせた。

玲が礼二たちに向けての第一声は「遅れてすいません。待ちました?」

礼二は、ぜんぜん、と短くかぶりを振った。

「二人ともすっげースタイルいいね」中尾は言った後、くちぶえを吹いた。

中尾が先導きって場所選びを行ない、シートを敷き、持ち物を置いた。てきぱきとした動作だった。

「先に行ってていいよ」中尾が元気よく全員にいった。

彼の声に、うん、と返事した玲が、Tシャツを脱いだ。里子も彼女にあやかった。

「れいじくん、くち、くち」中尾が礼二に向けていった。彼は唇をあからさまに開けていた。玲が礼二の口を開けたままの顔に、くすくすと笑った。礼二は照れ笑いを浮かべた。