「わしは、お主のことは知っておる」

「何で?」

「ずっと見てきたからだ」

 ……何それ。
 可愛い女の子に言われたいセリフだな。
 こんな、撮影中の侍に言われたって、嬉しくもない。

「それで? これは、何の撮影なの?」

 何か話が噛み合わないから、とにかく先に、状況を把握しよう。
 若干投げやりに聞いた僕に、佐馬ノ介は首を傾げる。

「サツエイ?」

 まじか。
 何かのロケじゃないのか。
 ていうか、『撮影』ってこと自体が何のことやらわかってないみたいじゃん!

 もしかして、まじで時代が違うのか?
 リアルタイムスリップ?
 うわっ……あり得ない……。

 ぽかんと大口を開けていると、いきなり佐馬ノ介が立ち上がった。
 小さい窓に寄り、耳を澄ます。

「始まったようだ」

 そう言って、佐馬ノ介は、そろりと窓を小さく開けた。
 僕は佐馬ノ介ににじり寄って、窓から外を覗いてみたんだ。

 一人の女の子が、何か必死で走ってきていた。

「何。何か始まったの?」

「祭りだ」

「お祭り?」