佐馬ノ介だな。
 佐馬ノ介が、僕に乗り移ったんだろう。
 佐馬ノ介が、鬼を見てるんだ。

 僕は鬼切を構えたまま、呼吸を整えた。
 慎重に、間合いを測る。

 鬼は床に落ちた手拭いを見た後、僕に目を戻した。
 そして、がばぁっと口を開けた。
 物凄い牙が、これ見よがしに並んでるのが見えたな。

 そのまま鬼は、床を蹴った。
 一足飛びに、僕に迫る。

 今だ!

 僕は足を踏ん張って、鬼切を抜いた。
 そのまま、ぶん、と背中まで回す。

 え?

 僕は一瞬、動きをなくした。
 完全に間合いに入ったと思ってたのに、手応えがなかったんだ。

 驚いて、今度こそ開いた僕の目に、鬼のどアップが映った。
 がしっと、身体が拘束される。

 さっき見た、素晴らしい牙が、目の前にあった。