ある土曜日の夜、Shown、Tony、Theo が『ゼロヨンレースでも観に行こうぜ』と部屋にいた俺を誘う。 

大学に入る為の英語試験を控えていたのであまり乗り気ではなかった。 しかし気晴らしが必要だった俺は息抜きをしようと、他の連中も誘って皆で一緒に行く事にした。

映画『ワイルドスピード』の様な派手さはないものの、そこには大勢のギャラリーがいた。 スタート地点の脇にいた俺達のちょうど道を挟んだ反対方向に、7~8人ほどのアジア系ギャングが俺達をじっと見ているのに気が付いた。 

俺が『Yo、場所変えようぜ』と言うが、車を噴かす爆音のせいで俺の声はかき消され仲間に届かない。 

嫌な胸騒ぎがする。 気付かれぬ様にそっと右手を後ろに回し、拳銃を握りロックを外す。 

『ババババババババババ!!!!』

耳が割れそうな爆音と共に2台のチューンナップした車がロケットスタートを切る。 横にいたTheo が急に俺にもたれ掛って来たので、

『Man、酔ってんじゃねーよ』

とヤツを引き上げると Tシャツが真紅に染まっているではないか。 

その瞬間、奴ら全員が銃を抜きこっちに向かって発砲し出す。 既に撃たれた Theo はその場に倒れ、俺達は一斉に奴らに向かって引き金を引く。 

何がなんだか分からなかったが、とにかく撃ちまくった。 

パニックになったギャラリーが必死にその場から逃げ出そうと大混乱になっていた。 奇跡と言えるほどかすり傷すら負わなかった俺と Tony は、Theo を担いで自分達の乗ってきた車の場所まで何とか逃げ延びた。 左肩を撃たれた Shown は激痛のあまり叫びながらも俺達と一緒に逃げてきた。 車に乗り込んだ俺達はすぐに病院へと向かう。 Tony が運転をし、後ろ座席に俺と Shown で Theo を抱えながら座る。 途中で持っていた拳銃の指紋を拭き取り外に投げ捨てた。