大学の授業では何度も挫折を味わった。 

英語を英語で勉強した様に、必須であった普通科目もゼロから勉強しなければならなかった。 因数分解など日本語でも聞いたことすらなかったのに。 

将来的な事を考えビジネスを専攻するが、第一専攻はあえて演劇文学を選んだ。 ”アメリカ人の様に英語が出来る様になりたい”から、気が付いたら ”アメリカ人以上に英語が出来る様になりたい”と上を目指していた。 先生が、

『Skye、前に出てきて5分ほど演技をしてみなさい』

と俺を呼ぶ。 40人ほどいる他の生徒は全員ネイティブ。 つまり完璧な英語力が要求される上、皆が分かるようなジェスチャーを交えて演技をしなければならない。 その場は何とか切り抜けたものの、常にハイレベルな注文を要求される。 

俺は自分が納得するまでとことんやり抜かなければ気がすまないタイプ。 色んな映画を見る様になり、人種関係なく色んな人達と話をし、話し方、単語の発音、ジェスチャーなど全ての細かい仕草までも完全コピーしていった。 

精一杯努力していたお陰で、卒業前には一番ハイレベルな英語や演劇などのクラスでも常に『A+』の成績を残していた。

大学で出来た5人の友人らとLA→ベガス→グランドキャニオンへの小旅行もした。 オープンカーの大きなキャデラックを借りて、一本道が引かれたデザート地帯を走り抜ける。 

大嫌いだったロックのサウンドも、今じゃ心の水と言えるほど心地良い。 白と黒のピアノの鍵盤の様に、白人と黒人の友人が仲良く笑う。 そして初めて目のあたりにしたアメリカン・ランドスケープの大きさに感動した。