新学期が始まって、まだ、まもない頃。

毎年この時期になると、
必ずやる交通安全教室。

体育館に全校生集まって、
警察官の話を聞いたり、DVDを見たりする。

「ねぇ~、美咲~。ダルいんですけど、交安」

ウチの右隣に座って、ダルそうにしながら言う、友達の
新田 真奈。髪はセミロング、ちょっと気が強めのバスケ部副キャプ。

「だね~、毎年内容同じなのにさ~」

ウチが言い終わったところで、ちょうど、体育館のライトが消されて
体育館の中が暗闇に包まれ、目の前のスクリーンに去年と変わらぬ
DVDの放映された。

はぁ、とため息をつき、ウチは正面を向いた。

このDVDには毎回、笑っちゃうところがある。
今年も、同じところで笑ってしまって、思わず隣の真奈の方に
振り向くと、同じ列に座っていた、男子と目が合った。

暗闇で人の顔なんて、はっきり見えないのに
しっかり、目と目が合ってしまった。

「・・・・・・・」

ウチは目を離すことができなかった。そして、その相手の男子も
目を離さなかった。

しばらく見つめあっていると、体育館がライトアップされ
一気に暗闇がライトに照らされた。
DVDが終わったんだ。

明るくなった瞬間、相手の男子は、ウチから目を離した。

ウチも、我に返り、椅子に座りなおした。

「美咲、今、休憩時間だよ?トイレ行こっ!」