どんっと、鈍い音がして、目の前から春斗が消えた。
倒れた春斗の周りの地面だけが赤く染まっていく。
「あっ………ぁっ……」
嗚咽の声がもれる。
手で口を押さえて、何度も首を振った。
理解したくなかったし、理解できなかった。
生ぬるい雨が私の頬を伝う。視界がぼやけてよく見えない。
けれど、地面が赤く染まっていくことだけはわかった。
「きゃー!!」
甲高い声が耳に入る。
我に返って、ポケットからスマホを取り出し、震える指で110番を押す。
早く、早く救急車を呼ばないと……。春斗が……。春斗が……。
「いやーーーーーーーーっ!!」
ぼやけていた視界が真っ暗になって、そこで、私の意識が途絶えた。