「人にはりんごジュース勧めて、自分はオレンジジュース飲むんだ」
変な人だな、そう思い彼に声をかけてみる。
彼は落とされたオレンジジュースを取り出すと、私の方を向いた。
「だって俺、楽しい気分じゃない」
「ああ、そうですかー」
「入院なんかしてるのに、楽しい気分なわけない、でしょ?」
にっこりと可愛く笑う彼。
どこか冷たく感じるのはきっと目が笑っていないから。
春斗とは雰囲気は似ているけど、決定的に違うところ。
「じゃあ、私もりんごジュース買うべきじゃなかったね」
精一杯の皮肉をこめていうと彼は驚いた顔をした。
「君も、入院してるの?」
オレンジジュースを飲みながら聞いてくる彼に私はこくんっと頷いた。
すると彼はまた、にっこり笑う。