「いやいや、冗談だからそんな怖い顔すんなって~」
なっちゃんは先輩を睨みつけていた。
「いや!別に…そんなつもりは…」
「無意識になっちゃってんのか!いいな~
俺も早く彼女ほしいわ~」
「頑張ってください」
すると…
『集合~!』
と監督が叫んだのでなっちゃんは
行ってしまった。
「じゃあ彼女さん、アイツのことよろしくな」
「は、はい!」
ちょっとチャラいけどいい先輩だと思った。
私は入り口のところで30分くらい待っていたら
なっちゃんの姿が遠くから見えた。
「なっちゃーんお疲れ~」
私が手を振って叫ぶと
なっちゃんは走って私のところに来た。
「ひまわり待っててくれたのか?」
「うんっ。一緒に帰りたいから!」
「そっか。せんきゅ!」
「いえいえっ」
「ねえねえなっちゃん」
「ん?…っ!」
私はなっちゃんが、こっちを向いた瞬間
キスをした。
「ひ、まわりっ」
「今日ゴール決めたからご褒美ってことだったんだけど…なっちゃん?」
なっちゃんが下を向いているので覗き込んだ。
「ばかっ!見んじゃねーよ」
「嬉しくないのかと思ったけど安心した!」
「ばかひまわり」
「なっちゃんって赤面症だよね」
「うるさい」
「かわいいよ」
「うるさいのはこの口か?」
「んっ…っ」
なっちゃんは少し強引に唇を重ね合わせてきた。
「っぷは…」
「息止めてたの?かわいいじゃん?」
「なっちゃん…性格変わりすぎ!」
「仕返しってことで」
「もうっ…!」
「ひまわり」
「なによ」
「また試合見に来いよ」
「…うんっ」
夏休みも残りわずか。
でも、最後に楽しいイベントが残っている。
それは…
「明日だね!花火大会!!」
「葵は捺と2人で行くでしょ?」
「うんっ!」
私の家で里奈と話していた。
明日は年に一度の花火大会。
毎年、里奈と誠也となっちゃんと
4人で行っていたけど今年は2人で行くことになった。
「部活終わる時間帯でよかったよね~」
「うんっ!」
「ま、誠也達はしんどいかもだけどね。私達は部活ないからいいけど…」
「確かにそうだよねー」
サッカー部は午後5時までするらしい。
でも、花火大会は午後7時。
あまり準備の時間がない。
でも、なっちゃんは間に合わせるからって言ってくれた。
そして次の日。
私は待ち合わせ場所の公園に15分前に来た。
すると…
後ろから肩をトントンされたので
「なっちゃん!」
と私が振り向くと
「君可愛いね~!よく言われるでしょ?」
肩をトントンしたのは全然知らない高校生くらいの人だった。
「あ、ありがとうございます」
私はひきつった笑顔で応答した。
「そんな硬くならないでさ!一緒花火大会行こうよ」
そう言って高校生は手を引っ張ってきた。
「やだやだ!なっちゃんと行くんだもん!離してよー!!」
私が叫ぶと
「おい」
「あ!なっちゃん!!」
なっちゃんが高校生の腕を掴んで
「離せ」
「なんだよ?クソガキ!」
「いいから離せって言ってるだろうが」
「いててて…っ。がきが調子乗るんじゃねーよっ!」
そう言って高校生は逃げていった。
「ひまわり!大丈夫か?怪我ないか?」
なっちゃんは私に手を差し伸べてくれた。
「大丈夫だよ」
「そっか…ならよかった」
「てか、さっきのなっちゃん今まで見た中で一番怖かった」
「そりゃあな」
「かっこよかった!王子様みたいだったよ」
「ばっばきゃろ!そう言うのを簡単に口に出すなって」
「だって、本当にそう思ったんだもん…ってなっちゃん?」
なっちゃんがうつむいているので覗き込んだ。
「なっちゃん!顔真っ赤だよ!」
「そんなことねえって」
「前々から思ってたんだけど…なっちゃんって赤面症だよね」
「うるさいぞ」
「照れてる~」
「全く…うるさいのはこの口か?」
「…んっ」
なっちゃんは強引にキスをした。
「っぷは…ちょっとなっちゃん!息できない」
「息止めてたの?可愛いじゃん」
「なっちゃん性格変わってるよ」
「そんなことないから」
「まあ…小悪魔みたいななっちゃんも好きだけどね」
「はいはい。じゃあそろそろ行くぞ」
そう言って私の手を引っ張った。
なっちゃんは前を向いているから顔は見えないけど
きっと赤くなっているんだろうな…
『ヒュー……ドンッ』
「なっちゃんなっちゃん!花火!!」
「そうだな。綺麗だな」
「私は~?」
せっかく浴衣着てきたのになっちゃんは何も言ってくれないし…
「あっ、あっちにひまわりが好きなクレープあるぞ~」
「あ、うん…」
なんかはぐらかされたような…
私がクレープを食べていると
「ひまわり…ついてる」
「え?」
すると、なっちゃんの顔が近づいてきて
「うまいなっ…」
私の唇についていた生クリームを舐めた。
「な、なっちゃんっ」
「ひまわり顔赤いぞ~」
「なっちゃんだって!」
「俺のは花火の光のせいだよ」
そう言って花火を見上げているなっちゃんの顔を私はずっと見ていた。
─ずっとこの幸せが続きますように