「みっちゃん、みっちゃん!!」








 3組の教室に響く。




 私のよく、聞きなれた声。










「なーにー?」










 友達との会話を中断させ、声の主の方を向く。



 声の主は、ずかずかと此方に向かって歩いてきた。











「辞典、持ってるだろ?貸してくれよ!」










 私の前に来た慧(ケイ)ちゃんが、顔の前に手を出し申し訳なさそうな顔をする。




 私は半ばあきれながらも、机の横にかけてあるバッグから辞典を取り出した。











「もう、これ何回目よ!」

「わりわり、毎回持ってこようとは思ってるんだけどさー」











 それというのも、慧ちゃんにはもう3日連続で辞典を貸しているからだ。