名前を呼ぶと彼は少しだけ笑った。
「覚えててくれたのか」
「あ、うん。それより瀬野くんこそ、私のことわかる?」
「一ノ瀬みのり(イチノセ ミノリ)だろ?」
「ん、正解」
瀬野くん。瀬野 光貴(セノ コウキ)くん。
バスケ部で、慧ちゃんと友達で、去年の夏くらいに紹介された人。
同い年には見えないくらい大人っぽくて、クール。
慧ちゃんとは正反対の彼は少し冷たく見える。
けどたまに笑ってくれるところを見ると優しい人なんだと思う。
「一ノ瀬?」
ずっと止まっている私を不思議に思ったのか、瀬野くんは声をかけてくれる。
そんな瀬野くんに私は笑いかけ、
「行こっか」
そう、声をかけた。