(俺の会社なら、何とかしてくれるというのか?)

そんな甘い考えも頭をよぎったが、彼女の暗い表情を見て、そんなこともいえないことは明白だった。



「なぁ、仕事は何時に終わるんだ?」


「えっと、取引先に1か所行かなければならないところがありますが、それが終われば今日はべつに・・・」



「デートしないか?」


「えっ??わ、私をどうするつもりなんですか?」



「おい、俺を強姦魔かチカン扱いしないでくれる?
朝から言いにくいことをわざわざ伝えにきてくれたお礼に、映画でも見て食事でもしないかなって思っただけだよ。
そりゃ、俺は兄貴みたいに洗練されてないし、ラングみたいに紳士っぽくもないかもしれないがな。」



「あ、ああ・・・そうでしたか。ごめんなさい・・・。
では夕方5時にはここにもどってきます。」


「ああ、5時な。
あっ・・・服装だけど、カジュアルでいいからな。
いきなりドレスとかでエスコートしろなんていわれても・・・ダメだからな。」



「はい、では行ってきます。」


「おお。行ってら~」


俺の会社の内部で何が起こっているのか知らないが、300億以上の不明金なんて・・・普通じゃない。
しかも、別の会社から調べ上げられているくらいだ。

社内の人間が知らされていないなんて、おかしいじゃないか。

社長、専務・・・そして取締役会では発覚してるはずだよな・・・。


もし、もし俺に火の粉が飛んできたらどうしたらいいんだろう?

そうだ、弁護士と会計士あたりの味方を作っておくのが得策だろうな。
よし、5時までに俺はそっちをあたっておこう。



そして夕方5時前になってクリセラとナナミアの女子高生妹たちが、俺がエリンとデートに出かけると知ってワアワア騒ぎ出した。


「レッド持ち物は大丈夫?」


「レッド、カジュアルでもちゃんと食事はおごってあげてね。
相手が社長だからっておごられて喜んでちゃだめよ。」


「やっだぁ~そんなのかっこわる~~~い。」


「レッド、無精ヒゲはちゃんと剃ったわね。
だめよ、だらしないままじゃ・・・変態に見えるでしょ。」



「ちょっと待て!おまえら・・・母さんでもそこまで言わねえだろ!
俺と出かけて俺は変態行為をおまえらにやったか?」


「べつにしてないけど・・・今のレッドはおっさんだしぃ。」


「そうよ、おっさんよ。」


「うわぁ・・・ひとがいちばん気にしてることを・・・。」