必死に言われても、ごめんな……。
「親がいない、なんて……そんなこと言うなよ……。そりゃ、お前の家の事情は知ってるけど……ほらっ! ふーはすっごいいい名前つけてもらったじゃん! 雅風(まさかぜ)だよ? すごいカッコいいじゃん! 理波(りなみ)ちゃんだって――」
その言葉は、真実ではないんだよ、刹那(せつな)。
俺には否定しか出来ない。
「ごめん。信じようとしてくれてるのはわかるけど、俺の名前も理波ちゃんの名前も、理波ちゃんを育ててくれた祖母がつけたものなんだよ。
なかなか出生届を出さないあの人たちに、業を煮やして」
感情の起伏が、声に付随しない。
というか、付随出来る感情がない。