『いや別に?』


マジかよ。

嫌いじゃないのかよ。


おいおい、何でだよ。

お前はホラーが苦手なんだろ?


だってもし輪がホラーが嫌いじゃないなら、別に輪じゃいけない理由なんてないわけで、でも俺にはあの時確かに――。


“輪ちゃんじゃ、だめなの…”

“ははーん、輪はホラーが苦手なんだな?”


だって、じゃあ……。


俺は言葉に詰まって、頭を掻いた。


望乃はやっぱり俺を好きだって事?

でも輪は望乃の事が好きで。

俺は由紀子さんが――



「どうかした?」

「あ、いや…」


ぎこちなく笑ってみせる。

とりあえず落ち着け、俺。



俺は改めて輪の横顔に目をやってみた。

鼻筋通って、長いまつげ。

利発そうなこの表情。


ワインレッドのネルシャツには、しっかりとアイロンがかけられていて、輪の性格が現れている。



輪は、どうして望乃が好きなんだろう。

どんな所が好きなんだろう。