「あれ、また拗ねちゃった?ぼく」
今度は、ぼくかよ……。
背を向けて小さくなった俺に彼女はおちゃらける。
俺は地味に反撃した。
「別に拗ねてませんよ。オバサン」
「あっ、コラっ!撤回しなさい!」
「いて!」
頭をポカっとぶたれて、俺は振り返った。
しばらく取っ組み合いが続く。
ふとした瞬間に目が合った。
「俺のこと、好き?」
「何、急に。好きよ」
「どんなとこが好き?」
「そうねぇ。素直で可愛い所かな」
彼女はいつもの癖で、猫だか犬だかのように、俺の頭を撫でる。
俺は子供扱いされてるみたいで悔しいながらも、されるがままだ。
「だから、可愛いって言うなって」
「はいはい」
由紀子さんが笑う。
よく見るとえくぼが両頬にできて、すごく可愛いんだ。
こうしてまったりしている時、彼女は少女のような表情になる。
俺といる時、そうやって無防備な姿を見せてくれるって思うとすごく嬉しい。
その笑顔、俺にだけ見せて欲しいよ。